大阪モデル?(2020/05/11)

このところ、大阪の吉村知事が提唱した、自粛要請の段階的解除に向けた独自基準「大阪モデル」が注目を集めている。

今回のコロナ騒動での吉村知事の動きは常に素早い。
例えば3月の連休を前にした19日、吉村知事は全国に先駆けて「大阪~兵庫間の往来自粛要請」を行った。
(自身のTwitter上で「3月の連休を前にした大阪~兵庫間の往来自粛要請(3/19)を行った裏事情」が説明されている)

 

今回の「大阪モデル」も、NZやドイツの成功を受けて、欧米各国が用いている警戒レベル毎の段階的規制を、全国に先駆けて緊急事態宣言の出口戦略として用いる・・ということになる。


欧米では当初から、エビデンスに基づいた警戒レベル毎の規制が設定され、コロナウィルス対策が行われている。
例えばNZの新型コロナウイルス 各警戒レベルは・・・

  ・レベル4(都市封鎖)
  ・レベル3(制限)
  ・レベル2(縮小)
  ・レベル1(準備)
※警戒レベルは政府が判断し、それに基づいて公衆衛生及び社会を考慮した新型コロナウイルス対策を講じることとする

 


一方、日本はどうだったのか?
例えば、3月10日の「新型インフルエンザ等対策特別措置法案可決」の際の西村大臣のコメントの答弁の末尾のみ抜き出すと

・今後もこの内外経済への影響をしっかりと見極めて、必要かつ十分な経済財政政策、これを躊躇なく行っていきたいと考えているところです。
・終息に向けて進んでいくことを期待したいと思いますし、そのために全力を挙げていきたいと考えております。
・今後も状況をしっかり見極めつつ、必要な政策はしっかりと対応していきたいと考えているところです。
・いずれにしても、専門家の見解をしっかりと聞いて適切に判断していくということになります。

この時期、世界各国で都市ロックダウンなどの具体的対策が行われていた中、あまりにも日本的過ぎる中身の無い答弁に唖然とした記憶がある。(実際は多くの原案は既に存在していたと思う)

だから、「大阪モデル」も世界標準で見た場合、完全に出遅れているのだが、日本的に見た場合、先走り過ぎている・・・のかもしれない。

 

さて、欧米では意思決定を行う会議の際に、ブレスト(ブレインストーミング)が多用される。

恐らくここが日本と諸外国の大きく異なる点ではないか?

 

このブレストについて思い出されるのは、私が2000年に元・航空自衛隊幕僚付だったKさんからアドバイスを受けた「米軍問題解決法」である。

米軍では作戦立案する際、ありとあらゆる意見を出してもらい、その中から「実行可能性見積りを実施」して最終的に作戦決定する・・・のだという。この問題解決法に付いて書かれた冊子をKさんから頂き、その後、仕事に活用することで、何度も修羅場を切り抜けることができた。私にとっては宝の理論だった。

Kさんは陸軍航空学生の最終参戦経験者なのだが、そのKさんをして「こんな手法で、現実的で無駄がない作戦計画を立案する軍隊に、日本は到底勝てない」と言わしめた。

このあたりについては、書籍「空気の研究」「失敗の本質」の内容に重なる部分である。

その後、2011年にNHKの番組でブレインストーミングを知るが、それはまさに米軍問題解決法の手法、そのものだったのは言うまでもない。

 

ブレストで大切なのは

①自由なアイデアの抽出を制限する、批判を含む判断・結論は慎む
②判断・結論は、ブレインストーミングの次の段階にゆずる
③自由奔放で粗野な考えを歓迎する。誰もが思いつくアイデアよりも、奇抜な考え方やユニークで斬新なアイデアを重視する

・・・ことにある。

 

ブレストは、広範囲から意見を出し合う必要から、多数で行うことが望ましいが、昨今、自分の考えを整理するための「一人ブレスト」用のツールも用意されている。


ところが、一人ブレスト用のツールをわざわざ使わなくても、エクセルの描画ツールを使えば簡単にブレストは可能だ。もとより、白紙のノートにどんどんアイデアを書いて行き、関連付けさえ行えば十分通用するのである。

大切なのは世間体にとらわれた意見ではなく、突拍子もないアイデアを数多く出せるか?である。かつて、私のスキーの師であるTOK氏が「それ、面白いねぇ~やってみなよ」と、ことある毎に言っていたことが思い出される。氏のようなスタンスが、自由な発想を生む土壌だと痛感した。
まさにそこが民主主義の民主主義たる根幹とではないか?そんな風に感じる。