問題解決法(2020/05/14)

今から20年前の平成12年、ノモンハンで一緒だった副団長の木島さんから「問題解決法」なるものを頂いた。

木島さんは大正13年生まれ。昭和20年当時、陸軍航空学生を卒業した直後で満州に送られて終戦。そのままソ連軍の捕虜となりシベリヤ抑留。復員後は映画製作会社の東宝(株)に勤務し、東宝労働争議も経験。昭和29年、航空自衛隊が創設されると同時に入隊。以後、操縦学校教官、航空幕僚監部(源田実氏の部下)、航空救難団などを歴任された方だった。元陸軍航空兵であり戦後は航空自衛隊ということで、木島さんは大叔父の話もよくご存じで、馬が合った。(大叔父の家でOB名簿を調べると木島さんの名前があったり)

さて、その木島さんと、確か帰りの機内で、私が神戸に戻ってからの話題、つまりそれは職場の状況・・を話すると、「思考法として、とても良いものがあるます。参考にして下さい。戻ったら郵送しますね。」と言われた。それは「米軍問題解決法」と言い、木島さん自身も出会った際に、大変、感銘を受けた思考法だという。「こんな考え方されてたら、そりゃ日本は負けるよ・・・」木島さんはそう言いながら、私に「米軍問題解決法」あらましを教えてくれた。その内容を聞いて私も惹かれるものがあった。驚くべきことに、作戦立案の際、「根拠」に基づいた「実行可能性見積」が考慮されるという。先の戦争では、実現不可能とも言える突拍子もない作戦で、多くの兵士や市民が犠牲となったのは、全ての日本人が知るところである。また、私自身、上司から業務上の、凡そ実現不可能な目標を押し付けられ、度外視の追い込みで切り抜けるようなことが、常に付きまとっていた。

今、この「問題解決法」を改めて読み直すと「KJ法」「ブレインストーミング」「エビデンス」などの要素がまとめられており、一体全体、何なのか?当時聞いた「米軍問題解決法」でネット検索しても、何もヒットしない・・・少なくとも木島さんが現役時代だった時のものだから、50年ほど前の資料なのだろう。実に謎めいている。

さて、この「問題解決法」の資料を頂いた後、さっそく業務に取り入れると、素晴らしい効果が得られた。特に仕事柄「問題の解決」にアイデアを求められることが多く、効果は抜群。使う機会も多かった。

私にとって宝の思考法となった「問題解決法」だが、その後、私がリーダーとなった、職場のトヨタ式業務改善でも大活躍する。特に効果が高くて印象に残っているのが「フリーダイヤル当番の業務効率化」をテーマにした時だった。

当時、職場では、時代の流れもあって「フリーダイヤル」を他に漏れず導入した。ところが、専任のオペレーターを置くこともなく、本社の課長以下、全員で当番として回している状態だった。これが職場に大変な事態を巻き起こしていたのだ。

というのも、当番は業務の傍ら行うことになっており、フリーダイヤルには、時にクレームの電話がかかって来るため、フリーダイヤル回線の子機が手元に回って来た日は、ベテラン社員でも戦々恐々としたものだ。私は本社の、情報システム、経理、クレジットを経験していたので、わりに全社の業務が見通せる立場にあったし、20代には整備部門を4年間経験しており、加えて車好きだったから、わりに事無きをえていた。それでも、午前中をクレーマーの怒りのはけ口となり、つぶしてしまうことも、しばしば発生していた。

であるから、このフリーダイヤル当番も、私のような変わり種や、各店舗で所長や工場長を経験してきたスタッフにとっては、比較的慣れた対応が可能であった(それでも大変には違いない)

問題は本社の事務スタッフや新入社員である。特に事務の新入社員にとっては大変な苦労だったようだ。この当番の際、クレームの電話がかかった場合は原則として電話を「クレーム担当」に回せば良かった。ところがこのクレーム担当員が、常に外出して不在なのだ。つまり逃げているのだ。その点を追求すると会社も「朝から晩までそんなことさせてたら死んでしまう。」という回答。全くもって「実行可能性見積」を欠いた仕組みだった。(作戦立案と実行・・・ということ)

この「フリーダイヤル当番の業務効率化」を改善のテーマにした時、特に印象に残っているのが、今でいう「ブレスト(ブレインストーミング)」を初めて実施した時だった。とにもかくにも意見が出ないのだ。一旦は頓挫したかに見えたブレストだったが、その後、会を重ねる毎に上手く行くようになって行った。自由で活発な意見をベテランから新人まで一様に集うためには「ホスト役のさりげない誘導(牽引)」が極めて重要だと痛感した。

日本の会議(寄り合い)というものは、新入りには発言権は無い。数名の発言権を持った古参者が、自己主張をぶつけ合い、論破した方に皆が従う・・・伝統的にこんな状態では、自由で活発な意見を引き出すのは不可能である。ブレストを成功させるには、まずは民主的な空気が必要だと言える。


木島さんは「米軍問題解決法」と言っていた。


KJ法、ブレスト、エビデンス、フィードバックが網羅されているとは。


今でいう「エビデンス」の重要性について。


今でいう「ブレスト」に該当。


??何だろう?


懐かしの文面。その後も度々お世話になった・・・


本編は、やや長い文面だったので、個人的にまとめた物を可視化してみた。