ただ一撃にかける(2020/07/14)

「ただ一撃にかける」平成15年度(2003年)文化庁芸術祭参加作品

久々に全編を視聴した・・・

この番組は大切なものを教えてくれる素晴らしい作品である。

今回、忘れていたり曖昧となっていた部分を、再チェックした。

 

栄華直輝(現・教士八段)は、剣道選手としては「小兵」、そして「遅咲き」の選手である。

この番組を初めて観た当時、「小兵・遅咲きの剣士」というキーワードに惹かれて視聴したことが思い出される。

調べると彼は目立って強い選手でもなく(とはいえ全日本)、天才的強さを見せ、ありとあらゆる大会で常勝してきた平成の巨人・宮崎 正裕(教士八段)とは対照的な選手である。

 ところが、栄華選手は、全日本選手権(2000年・第48回大会)、世界選手権(2003年・第12回大会)という、とてつもない大舞台で、二度も類を見ない技を魅せた。


この番組は、連覇のプレッシャーに追い詰められた剣道日本選手団を取材するところから始まったとされるが、最終的には、栄華選手の「魂の一本」が出るまでの、長い軌跡を記録したものとなった。

 

栄華選手は、この大舞台での「魂の一本」を「考えて出来るものではない」と語ったが、この番組こそが「創ろうとして完成した作品では無い」・・・のである。

 

さて、当番組を観ると勘違いしてしまいがちだが、実は、精神力を鍛えても「実力以上のものは出ない」・・・・

この勘違いがこそが「気持」や「精神主義」に偏りがちな日本社会の恐い側面にもなっている。特に社会的ポジションの強い者が悪用すると、下位ポジションの者達は逃げ場を失ってしまう。

 

この番組が(栄華選手が)教えてくれるのは、真っ向勝負の正しさではない。大切なのは、最善のプランを選択するための、力の出し方(法則)である。

 
「勝ちたい」「得したい」「他人を見下した優越感に浸りたい」「偉くなって人を使いたい」「負けたくない」「恥をさらしたくない」・・・そんな「欲」や「恐怖」が、最善のプランを選択するための、力の出し方(法則)を狂わせる。

栄華選手は、大舞台を戦うにあたって、どのようなプラン(作戦)を用いるか?宇宙に委ねたのである。無心で取り組むところに最善のプラン(作戦)が提示されるのだ。

この理屈は、映画「炎のランナー」で語られるストーリーや、白血病で戦う水泳の池江璃花子選手、沖縄戦・ハクソーリッジの戦いでのデズモンド・T・ドス衛生兵らの話に共通である。多分に、大叔父がノモンハン事件で墜落した戦隊長を助けた時もそうだったのかもしれない。

 

人それぞれ、身の丈に合った相応の場が与えられる。そして、心ひとつで、その人にとっての「ただ一撃にかける」は、日々の生活でも体験可能なのである。

日々、忘れがちなことを、この作品は改めて気付かせてくれるのである・・・

 


番組のラスト。一人道場で打ち込みを行う姿が印象的。


スキージャーナル社・・・(笑)


世界大会にはエリザベス女王夫妻の姿も・・・


宿敵、キム選手と・・・・
今回、このチャプターを取る際、キム選手の睨みつけるような鋭い視線に気付く。


この身長差。そして栄華選手も鋭い視線を反す・・・


異例の再試合の後の、10分以上の膠着の後の、会心の一本!会場は総立ちで栄華選手に拍手を送った・・・


ようつべ動画より・・・


 


一瞬、何が起こったのか?
呆然と審判を見つめるキム選手・・・
膠着した試合運びに、彼の心に一瞬のポケットが生じたのだろう。その瞬間を栄華選手は逃さなかった。カメラは最善の選択が成された瞬間を捉えている。
秒数にして0.1秒ぐらいか???