角田夏実選手の巴投げから寝技に持ち込むムーヴは、強引に見えて、なぜか掛かってしまう・逃げ切れない技であり、「寝技の鬼」「刺客」等と称されているものである。
正確な日本時間による試合時刻が今一つ判然としないのだが、記憶では7/28の夜、これは毎夜のことなのだが、要介護1の母の様子を見に行った実家で、大河ドラマ「光る君へ」を観た後だったろうか?パリ五輪のメダル第一号の角田選手の試合映像をニュースで見て衝撃を受けた。以降、My格闘技ブームが訪れている。
(※実は7/28という日は、日中に五輪フェンシングの江村美咲選手「2022年の世界選手権までのドキュメント」を視聴。共通点から、久々に「ただ一撃にかける」を観た日でもある)
My格闘技ブームの原因となったのが角田選手の試合運びだった。それは金メダル決定ニュースのダイジェストだったわけだが、その映像を見て、直感的に柔道らしからぬ試合運びに違和感を感じた。
特に、巴投げから寝技への連携。そして膝で相手の腰を押さえて動きを封じる動作など、各所に柔術の所作が垣間見えた。今思えばそれは、記憶の片隅にあるヒクソン・グレイシー×船木の試合を見るようであったのかもしれない。
そして翌日の月曜日、五輪の話題など、さらさら職場でする気もなかったものが、興奮気味に職場で話題にして、ネットで調べると当にその通りで、角田選手は柔術の世界選手権でも優勝可能と言われるほどの実力者だった。
更には日本柔道選手団では最高齢の31歳、異色の経歴、52kgのスター・阿部詩選手と被さるのを嫌い、48kgへ減量・移行…などなど興味は尽きない選手であった。
正直、全く知らなかったし、日本選手団出発のニュースで彼女が映った際は「水泳の選手?」と思ったほどである。柔道っぽくないスレンダーな体格も、柔術的だったということだ。
その後、コロナ明けには行くつもりだった柔術の道場に連絡を取り、初めて練習に参加したのが金曜日の夜…
するとこの夜、ムーヴの練習メニューは紫帯の経験者でも難解なものだった。「いやぁ、普段はこんなに難しくないんですがね…」
教えてもらったのが、何と巴投げだったのである。
後で聞くと、やはり角田選手の金メダル取得から、この夜の練習メニューとしてサービスくれたのだという。ただ、誰もこのことに気が付いてない様子でもあった。
教えてもらって直ぐにできるものではないが、以下、忘備録として記述する。
(※8/4深夜に行われた混合団体戦の決勝より。相手は2階級上のメダリスト、仏・シジク選手)
やや、強引ともいえる展開でシジク選手に巴投げを掛ける角田選手。
習ったポイントとして「先ずしっかりと相手の股関節付近を足裏で押さえること」
シジク選手は角田選手より2階級上ということで、いとも簡単に持ち合ってしまう。
ところが、ここからが謎ではあるが、シジク選手のカカトが既に浮いてしまっている。角田選手は左足でシジク選手の股関節付近を取りながら、実は?右足でシジク選手が前のめりになるよう、コントロールしている(多分)
この局面でシジク選手は足がマットから浮き上がり、両者とマットを繋ぐものは、角田選手の右足のみとなる。これは完全に角田選手がリードしている状態といえる。
シジク選手の身体が完全に宙に浮いた状態…
シジク選手は腰が引けた状態となり、そして思わず、角田選手の袖を放してしまう(手を放す理由は不明)
そしてここが最大のミソなのだが、角田選手の左脇がシジク選手の右足を押さえている。ここで角田選手は袖を放して、シジク選手の右足裾、もしくはカカトを取っても良いらしい。
慣性に任せてつんのめるシジク選手に対し、股関節を押さえていた左足を伸ばして行くことで…
左足を伸ばして行くことで、嘘みたいにシジク選手が倒立状態となる。
本当に嘘みたいな感じである。
欧米系の観客(フランス人?)も拍手喝采である。ここまでくると、もう、フランスの宿敵というよりは、柔道好きなフランス国民から見ても英雄ということになろう。
もしかすると?だが、将来的に角田選手の連覇を制止するかたちで、国際試合ではルール変更が加えられるかもしれない。しかし、そうなっても角田選手は柔術家の道を進めばよい。