薬師岳、黒部五郎、北ノ俣岳④

◇2012/05/01 北ノ俣より下山。そして・・・◇
 
07:30 撤収後、帰途に着く。下山するととんでもない事が待っていたのだが、この時は知る由も無い。

08:50 寺地山山頂。この尾根を越えるのに実に1時間半近くを費やした。山陰の植林帯も真っ青の難儀な区間である。ここでつぼ足の登山者3名に追い付かれる。つまり、つぼ足で歩いた方が早かった・・・ということになる。
後はひたすら標高1660m附近の鞍部まで滑り降りる事が出来ればラッキーである。
 
10:15 神岡新道との合流附近で道を間違えそうになるが、無事にルートに乗る。この界隈、時期的なものもあるのかもしれないが、所々に深い沢(溝)が存在し、コースを間違えると復帰が容易ではない。
 
10:30 1660m附近の鞍部着。ここまで無事にスキー滑走で下りて来ることが出来た。ここからシールを着ける。
次に1690mのピークからの下り斜面が存在するのだが、今の足の状態ではスキーコントロール困難と考えシールを外した。その時、先の3名のつぼ足登山者が現れた・・・つまり、北ノ俣からは、つぼ足の方と同等という事だ。荷の重量が違うかもしれないが、スキーを担ぐと更に重量が増すことを考えると、どちらが効率的なのだろうか??
 
無事に斜面を滑り降り、シールを再装着。いざ歩き始めると、相当距離が空いたはずの3名の登山者に、一気に追い付く。このあたりスキーの機動力は恐ろしい程である。
 
12:00 鉄塔の附近1643mピークで再びシールを外す。これがシーズン最後と考え、十分に水気を落としてシールワックスもかけた。後は来た尾根を下れば良い。
 
最後の滑走開始・・・しかし、気が付くといつの間にか隣の尾根に滑り込んでいた。こりゃ失敗したな・・・と思っていると、上から突然、1名のテレマーカーが降りて来て「こちらが夏道ですか?」と私に聞くではないか。
そのテレマーカーにルートミスをしていることを告げ、逆に「夏道をご存知ですか?」と聞くと、夏道は全く知らないのだという。なんてこった・・・。それだけならまだしも、ルートミスの原因が私にあると言いたげに「まいったなぁ、ちぇっ!」と執拗に何度も繰り返す。
 
私に言わせれば、私の答案を勝手に見て、試験に落ちた・・・と私に文句を言っているようなものだ。他人のトレースを参考にするもしないも、本人の自己判断である。この時点で、このテレマーカーを相手にする気は失せた。
(これを人に言わせれば、他人を道迷いに追い込みながら、最後まで責任を取らない・責任を放棄した・・と取る方も居るやも知れない。しかし、ここは猛吹雪の黒部五郎の山頂でもなければ、薬師カールの底でもない。飛越トンネルまで直線で150m、標高差にして30m程の場所だ。)
 
そして、私が沢の下の様子を見る為に降下すると、そのテレマーカーは着いて来る。
 テレ「降りても大丈夫なんですか?」
 私「いや、わかりません・・・。雪、切れてるかもしれませんね。」
案の定、雪は切れて先に進めなかった。
 テレ「はぁ~っ!また登り返しか・・・」とブツブツ。
私は相手にする気も無く、さっさとシールを装着した。
 テレ「どうするんですか?」
 私「いや、沢の繋がっている場所まで登り返して、隣の尾根に上がろうと思いましてね・・・」
そこまでアドバイスすれば、もう十分だろう。私に着いて来ないで下さい・・・と言う訳にもいかず、私はそのテレマーカーを無視して登り始めた。
 
標高にして20m程登高すると、うまく沢が繋がっている。その先はかなりの急斜面となっているが、笹や木の枝が垂れ下がっており、これを利用すれば、簡単に突破出来そうだ。
利用出来る物はなんでも利用する・・・氷ノ山や東山、扇ノ山でしょっちゅう遭遇するシーンである。私はその個所を突破して、難なく隣の尾根に戻った。
 
対岸を振り返ると2名のスキーヤーが沢の下に進もうとして迷い込んでいる。別のスキーヤーが降りて来て、先のテレマーカーと合流したのだろうか?すると程なく先のテレマーカーが現れた。どうやら2名のスキーヤーは全く別のグループだったようだ。
このテレマーカー。私の突破した個所を同じように突破して来たようだ。そして、ありがとうございました・・・みたいなことを言っている。

それにしても、彼がもし、私が突破した個所を行こうとして失敗し、重荷のまま沢に滑落したらどうだったであろう。そう考えると私自身、行動に問題は無かったのだろうか?しかし、私が突破した個所から更に20m程度登り返せば、安全に隣の尾根に戻れる場所はあった。なんなら尾根を丸ごと登り返せば良い。彼が私と全く同じ場所を突破する必要はどこにも無いのである。

12:45 飛越トンネルまで無事に戻る。
 
13:00 道の雪が解けて、スキーで滑れるのは1.8km附近までだった。荷物を降ろして、路肩の雪解け水を雪で堰き止めてスキーを洗う。残りの約2.5kmをひたすら歩く。山桜が美しい。

14:00 車に到着。・・・と同時に雨。恐ろしいほどのタイミングの良さである。
15:40 帰りの長丁場に備えて、荷物を整理し直し、食事を取って一息つく。
そろそろ平湯にでも行こうか・・・と車を発進させると、覚えのある感触が身体を伝って来た。もしやっ!と思い、車を降りて確認すると・・・やはりパンクしているではないか!先日、八方の帰りにHRS氏の車で一晩に2回バースト経験をしたところである。内、1回は私の運転中に恵那山トンネル内での話だ・・・。

これには正直、笑いしか出なかった。早速、HRS氏に写メールする。短期間での3度目のパンクなのでタイヤ交換は手馴れたものだ。こんな事もあろうかと十字レンチや輪留めも準備していた。ところが肝心のスペアのテンパータイヤの空気圧が無い・・・これは痛かった。爪を切り忘れていたのと同様、スペアタイヤの空気圧も確認しないと・・・と思いつつ忘れていた。
まずはGSでスペアの空気を入れなければならない。とりあえず観光地である平湯方面に行けば何とかなるだろうと判断、傾いた車を時速35km程度で走らせた。山吹峠の曲がりくねった道が延々と続く。時々、車を停めてタイヤの温度を手で確かめると、他のタイヤは冷たいのに、テンパータイヤは相当熱くなっている。
結局、28km離れた上宝町長倉のGSまで2時間かけて辿り着く。時間が少し遅かったにもかかわらず店は開いており、パンク修理が出来るか尋ねるとあっけなくOK。程なくパンク修理も完了する。不運なのか?幸運なのか?全く訳がわからない・・・。
聞けばこれから先、平湯方面にGSは無いとのこと。またこの時間では開いているGSはまず無いとのことであった。
丁寧にお礼を述べ、平湯に車を走らせる。確かにGSは存在しない。また、あったとしても閉まっている所ばかりだ。改めて幸運さを実感した。
18:30 平湯に到着、無事に4日分の垢を落とすことが出来た。まさに、作戦に参加した特殊部隊員が、基地に帰還し、シャワーを浴びている時の心境は、このようなものだろう。日焼け止めの効果も無く、やつれてひどい顔になっている。お腹も皮だけになっていた。
その後、高山市内へ移動。双六の時に立ち寄った食堂を発見するが、道の駅を探して清見の方に移動したので、翌日の市内散策は断念。道の駅「ななもり清見」でスーパードライ黒、広島焼きでささやかな酒宴。カエルの鳴き声が聞こえた。

 

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朝の風景。あとは帰るのみで、のんびりしても良いのだが、帰りの時間がどれだけかかるのか?わからない点、また、夕方には雨の予報も考慮して、通常通りの行動とする。
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朝の風景、その2。当分、この風景にも会えない。
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天気も良く、遠く白山も朝日に輝いていた。
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朝もやの織り成す、自然のグラデーション。
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山陰の植林帯も真っ青の寺地山への尾根。スキーの苦手とする区間である。
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1時間半以上をかけて寺地山へ。来た時は西日に輝いていたが、朝日に輝く北ノ俣岳もまた味があって良い。
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黒部五郎も見えている。
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標高1842m、神岡新道との合流までは気持ちの良い場所も多い。つま先も丸めておけば、何とか持ち応えることが出来た。
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時々、ルートミスしそうになるが、その都度、GPSで確認しながら進む。つい10年前まではGPSもポピュラーで無かったことを考えると、GPSが無かった時代、大変だったろうなぁ。
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急に曇り始める。雨の降り出しは時間の問題となった。
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ひと悶着はあったが、無事に飛越トンネルに到着。雪解けが進んで、さらにアスファルト歩きの距離は増えているだろう。
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トンネルから1.8kmに地点で雪は終了。雪解け水を堰き止めてスキーとブーツを洗う。
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このような、竜に似た木も・・・。
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黒部五郎も見えている。行きに見えていたのはそうだったのか・・・。
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山桜もこれからが本番・・・。
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車に到着した途端に雨。後はのんびりと帰宅準備をして腹ごしらえをする。平湯にでもいってみようかと車を動かすと・・・。
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下り坂だったので輪留めを行い。十字レンチを使って手早くタイヤ交換を行う。わからない部分は車のユーザーズマニュアルを見れば、一通りのことは書いてある。
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準備万端だったはずが、肝心のテンパータイヤの空気圧が無ければ・・・・。
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28km離れたGSで、予定通りタイヤ交換をする・・・と思えるくらい幸運だった。
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無事に平湯到着・・・。
4日ぶりの風呂。自分の姿を鏡で見てびっくり!

 

Schi Heil !!