プルーク暴言A・006号「二軸論・ナンバとの遭遇」

【プルーク暴言A】006号「二軸論・ナンバとの遭遇」

そもそも、私が本格的に市野スキー理論をうさん臭いと強く思い始めたのは、2003年、日本スキー教程に「水平面理論」が採用された時点に遡る。

それまでは「水平面理論」など、どうせ売れ残った技術書に書かれている内容でもあるし。 まぁそんな考え方もあるわな・・・程度に考えていたものが、突然、日本基礎スキーの根幹に据えられたのだから驚きも大きかった。

どのような内容か?興味はあったものの、高い教程本を買うのはお金をドブに捨てるようなものだ。恐らく、スキースクールに所属して指導員でもしていない限り、どのようなメソッドになっているのか知ることはできない。一般スキーヤーの私には縁の無い話ではあった。

 

【2004年、師走】

時は過ぎ、2004年の師走・・・知人から、丸山貢一氏のサイト"斜滑考"に面白い内容がUPされていると連絡があった。早速、覗いて見ると、愛知のM下氏から指導員研修会の資料が手に入ったという内容だった。

(2004/11/13)M下君からの贈り物
http://www.janis.or.jp/users/hpalpine/ski-zakkan-10.htm#morishita

(2004/11/21)M下君からの贈り物Ⅱ
http://www.janis.or.jp/users/hpalpine/ski-zakkan-10.htm#morishita2

UPされていた記事の中にリンクがあった。以前にも紹介した神奈川県連指導員研修会における市野教授の講演の模様である。
http://www.sak.or.jp/report/2005/kensyu-riron/kensyu-riron01.html

私はこの記事を読んで、初めてSAJのスキー教程における市野理論の展開を知ることとなる。まさに「水平面理論」が、そのまま採用されているではないか。これには驚いた・・・このような講演を聞かねばならなかった神奈川県連の指導員の方々が気の毒に思える。1級以上のスキーヤーであれば、このようなこじつけだらけの水平面理論に不自然さを感じるのは当然だろう。

更には、当時スポーツ・シーンで話題をさらっていた「二軸論」を引き合いに出している。知名度のある「二軸論」を道具に使い、さもその延長線上に「水平面理論」があるのだと錯覚させる手法は、まさに、新興宗教マルチ商法そのものだった。そして、私はリンクを読み進めながら、何とも言い様のない腹立たしさを感じていた。

古い技術と新しい技術、変化できるものが生き残る。

「水平面理論」に不自然さを感じた我々が、保守的だと言わんばかりの言葉だ。

早速、居ても立ってもいられず、感想を愛知のM下氏にメールを送る。しかし、私自身、市野理論の引き合いに出されている「二軸論」に関して十分に理解しているとは言えなかった。興味が出ればとことん調べる・・・これが私の流儀だ。「二軸走法、中心軸走法」という言葉をネット検索すると、「ナンバ」という聞き慣れない言葉に行き着いた。実はこの時から私と「ナンバ」の終わり無き戦いが始まったように思う。

そこで、しばらくスキーの話題から離れて「ナンバ」に関する内容で話を進めたいと思う。

 

【自然に身に付いた走り】

2004年、この年、私は人生で初めて「ランニング」の習慣が身に付いていた。
その頃は、まだ、現在のように早朝ランニングではなく、仕事から帰宅して21時を過ぎてからのランニングだった。帰宅後、軽いランニングを40分~1時間ほど行なうと、デスクワークによる腰痛も解消され、心も身体もすっきりした。走らなければ、翌日、腰が重く、必然的に走らざろうえなかった面もあり、これが「毎日ランニング」が身に付いた原因にもなっている。

ちなみに、そのランニングは少々変わっていた。荷を背負ってのランニングだった・・・

そもそも、私が走り系のトレーニングを開始したのは、2000年、モンゴル渡航準備の一環としてだった。現地での不測の事態が予測される中、場合によっては徒歩で15km、20kmと歩かねばならない可能性があったからだ。当初は10km程の荷を背負い、隣町までの往復9kmを歩いたのが始まりだった。慣れるに従い荷の重量は増え、(エスカレートして?)最大で36kgほど担いだ時期もあった。

しかし、そこまでやっても2003年から始めた山スキーは敗退の連続だった。そこで作戦変更、1週間おきに激しい負荷をかけるのではなく、毎日、軽い負荷で走ってみることにしたのである。つまり「LSDレーニング」(Long Slow Distance)に作戦変更したのだった。(※本当のLSDレーニングは、長距離・長時間・低い負荷である。)

・・・とはいっても、陸上競技の経験など皆無だった。何に留意すれば効果が出るのか?全くわからない・・・

そこで、森永ザバスから送られてくる小冊子、「ペンタ」に連載されていた「正しいスポーツ動作入門」 東京大学・小林寛道名誉教授による、スプリント・トレーニングマシンの開発に関する記事を参考にしてみることにした。

特に参考となったのは「正しいスポーツ動作入門」Part3(捻りのパワー・ストラッグルマシン)、Part4(運動神経・アニマルウォークマシン)の回である。

(※ペンタ、№25、№26号に掲載)

 

小林寛道名誉教授によると「今、ランニングは"体幹のひねり・インナーマッスル"の強化が主流」だという。

そこで私はランニングをする際の注意点として・・・
体幹のひねり・インナーマッスルの強化
②腰のひねりではなく、みぞおち辺りのひねりを意識
③肩甲骨と骨盤の連携(四つ這い運動)
  ・・・を基本に据えた。

また上記にフリーダイビングで得たヨーガなどの知識を絡め、次のことを常に意識しながら走った。
A.背筋をしっかりと伸ばす
B.とにかく肩の力を抜く、全身の脱力
C.背骨を中心としたインナーマッスルによるひねり力を利用

そして、次第に自分流の走りが完成して行くのだが、それは以下のようなものだった。
a.ザックで上半身と腰を固定されているので、肩のラインはあまり動かせない。ヒジもあまり動かない。
b.しかし、ひねりを意識しているので、踏み出した足の側の腰は前に出た。
c.インナーマッスルを積極活用しようとすると、腰が「鼓」(つづみ)の形に似た回転を始めた。

つまり、肩のラインはあまり動かないのだが、その分、腰が鼓運動をするので、背骨のひねり感が強く感じられた。腰痛が解消されたのは、この「背骨のひねりの効果」によるところが大きいと考えられる。
また、ヒジはあまり動かさないが、肘から先をくるくる回すような動きや、上下に動かすと走りのタイミングがつかみやすくなった。(マラソン野口みずき選手も、手をくるくる回す感じでタイミングを取っているという。)
登山用のザックを背負っているので、体幹の動きををザックで制限されたことにより、このような走りとなったようだ。

実はこの腰の動き・・・2000年の大屋デモ・キャンプで豊野(旧姓:伊藤)真紀子さんが、夜のミーティングで見せた腰の動きである。ラテンダンスの様なその腰の動きに、参加者全員が「おおーっ!」という声をあげた・・・。そして50名ほどの参加者の誰一人、この腰の動き真似できなかったのだ。それだけ腰の周辺は不器用なのだ。

このような動きをランニング中に意識できるようになるのは、大変貴重な経験だったと言える。(※ちなみに、私はこの豊野真紀子さんが"魅せた"腰の動きを「マッキー・ダンス」と命名していた。)

結局、私が身に付けた走りというのは「競歩」のようでもあり、「ぐにゃぐにゃ走り」「オカマちゃん走り」とも表現できる走りだったのだが、ひとつ言えるのは、背骨を中心とした「一軸運動」ということだ。

そして、2004年の師走。私は「二軸走法」の代表格である「ナンバ走り」を知ることとなる。私が荷を背負いながら走って会得した走りとは全く異なる「二軸」の走り・・・強い違和感を感じたのは言うまでもない。

 

続く・・・Schi Heil !!