愛車の改造大作戦

今年に入ってからアトレー号の足回り強化と、10年振りにスタッドレスの買い替えを行った。アトレー号は既に10年経過の中古車であり、今更、何を??という向きもあったが、いくつかの理由により、踏み切るに至った。

【運転し難い車】
夏頃から、遅番の時、駅のホームから見える車列を眺めながら、車の買い替えのことをずっと考えていた。
愛車のアトレー号も、購入から今年で10年。走行距離はいまだ5万キロ弱とはいえ、買替を検討する時期に入ったのは否めない。問題は現在の年収である。とてもローンを組める状態ではない。本来ならスキーも辞めて、車を手放しても良いぐらいである。車の買い替えという問題は常に悩みのタネだった。

当初よりアトレーのフワフワとした乗り心地に不満を感じながら、気が付けば10年近くが経過した。
購入の際、2駆のS320を試乗した時は何ら不満は感じなかったのだが、4駆のS330は明らかにもっさりしており、ある意味、期待を裏切られた感じだった。
一番フラストレーションを感じるのは、予想しないタイミングで予期せぬ動きを見せることだった。運転感覚としては10代から20代前半にかけて乗っていた実家のカローラ似ているのだが、アトレーは車高が高く、幅も狭いため、更に不安定さが増している感じだった。

また、購入当初より、スキー道具を積めるよう、後部荷室にスチール製の棚を設置していた。これはRAV-4でやっていた事をそのまま引き継いだものなのだが、便利である半面、荷棚自身の重量と、スキーを乗せる位置の高さにより、結果として重心が高くなり、運転性の悪化に拍車が掛かってしまった。
※ルーフキャリアーにスキーを乗せた時に感じる違和感と同様のものである。

アトレーは、S81の時代に一度乗っているのだが、当時はフロントにスタビライザーを入れることで、ある程度、ハンドリングの改善が見られた。しかし、S330の場合はそういったパーツは一切販売されていない。
唯一、可能だったのは、前後タイヤの空気圧を調整することであった。

アトレーは基本車体がハイゼットバンであり、最大積載量350kgの荷を積む後タイヤの空気圧は、前タイヤよりも高い設定になっている。しかし、私の車で最大積載量まで荷物を積むことなどあり得ないので、必ずしも後タイヤの空気圧を高くする必要は無い。いろいろと試してみると、前後の空気圧を同じにした時が、一番安定しているようだった。

こんな状態で迎えた9年目の昨年、思い切って後部の荷棚を撤廃して、スキー道具の積み込みポジションを再考してみたのだ。これにより、運転感覚にかなり大きな違いが現れたのだが、とは言っても、根本的な原因が解消したわけでは無かった。

【新車買替か?足回り強化か?】
今年10年目を迎えるアトレー号は、本来なら買替の対象であり、足回りに不満があるのであれば、次に買うであろう新車の足回りに期待するのが当然といえるところが現在の年収では新車はおろか、中古車すら購入することが出来ない。このまま乗り続けるしか選択肢は無いということだ。そんな中、改めて足回りを強化することを思い立ったのが、昨年の秋頃の話である。

これまでも何度か足回りの強化を考えた時期があった。その度にネットで検索してみるのだが、車高を下げるローダウンサスのキットしかヒットしなかった。私が20代の頃は、車高はそのままでダンパーを強化するのが主流だったのだが、そのような商品は一切見つからなかった。
この流れで行くと、車検対応のローダウンスプリングに交換・・というのが筋であるが、そこでネックとなったのが車高の問題だった。

【雪国を走るがゆえの問題点】
雪道を主に走る私にとって、車高は極力高い方が都合が良い。その点、1995年から10年乗ったRAV-4は、くされ雪が50cm以上積もった空き地に突っ込んで行っても何ら問題が無く、めっぽう積雪には強かった。

ところが、アトレーの場合、ノーマルでも車高はどちらかというと低い方で、特に4駆ミッション関係のオイルパンが下に飛び出しているのが問題だった。それでも、一般道の様に定期的に除雪の行われる道で不具合を感じることは無かったが、スキー場の駐車場や、林道に一歩入った駐車スペースなどでバンパーをこすることが多々あった。
それでも新雪であれば良い。日数が経過して氷化した雪だとバンパーの傷や破損につながる可能性があった。現に、鳥取県の沖ノ山の登山道で林道に入ろうとした際、雪がバンパーをこすり、進退窮まった経験があった。バックして脱出する際にナンバープレートが雪に引っ掛かりが曲がってしまい、今でもそのままになっている。
車高が下がるのはどうしても避けたかった。

【いつしか時は流れ・・】
結局、思い切ったこともできず、10年と言う月日が経過してしまった。前述の通り、本来ならば時期が時期だし、買替によって運転性能の向上に期待するところだった。もちろん、自分自身もそのつもりでいた。

ところが、全社を退職した後、しばらくの間、失業を経験して、ある程度生活が安定したのがこの2~3年の話なのだが、ある程度、予想していたものの、ローンすら組めない年収であることが判明した
※実際問題として、今の車を際限無く乗り続けることはできない。次の車をどうするのか?悩みのタネである。

しかし、失業期間とは違い、車を買い替えるほど大金は無くても、足回りの強化をする程度のゆとりはできた。
買替が無理だということが決定的となり、足回りの強化を意識し始めたのが昨年の秋。ちょうど冷凍機3種の試験が終了した後のことであった。

【足回り強化を再考】
年末年始を風邪で台無しにした後、体調が回復した1月上旬になってもスキー場に雪は無く、また降雪の見込みも無かった。少し時間が出来たので、ネットで調べてみたのだが、ダンパーだけの強化というのは出てこない。また、ほとんどがローダウンに関連している。

そこで一度ショップに相談してみようと思ったのだが、20代の頃に行きつけだったショップも閉鎖となっており、行く当てもない状態。そんな時、オートバックスの通販が比較的活況を呈しているのを知る。その中に車検対応のローダウンサスがあった、値段は1万5千円程度である。もしかしたら車高の変化が無い強化サスがあるかもしれない・・・と、近くのオートバックスを訪ねてみた。

結果は予想外のものだった、まず、ダンパーだけの交換や車高を変化させないチューンナップは、まず無い。そんな問い合わせはお客さんが初めてだ・・・ということであった。これには正直驚いた。

今のトレンドは、柔らかいスプリングで車検対応の範囲で車高を下げ、重心を下げることで安定させるのものだという。まぁ当たり前といえば当たり前の話である。
こういったチューンは20代の頃、L70ミラに乗っていた時にやっていた思い出がある。当初は強化ダンパーとスプリングの交換で、かなり硬めの足回りにしていたのだが、ボディのきしみが激しく、結局、ノーマルのスプリングを軽くカットして、軽く車高を落として安定を計った時期があった。まさにその通りのチューンが主流だという。

この原因として、長引く不況や若者の車離れ、また、ノーマル車の品質向上などが原因で、昨今は車に金を掛けない人が増加し、スプリングだけの交換で効果の得られるローダウンが、足回りチューンの主流になったのではないか?それには法律の改正?で車検対応のローダウンサスが公に販売されるようになったという、昨今の事情も加味しているのではないかと思う。(あくまで想像である。)
しかし、相変わらずネックは車高が下がることにあった。

とりあえず昨今の事情を知って、一旦、店を出て引き下がることにした。
自宅でしばらく頭を冷やして考えてみる。
もし新車を購入したとして、運転性能は向上が見られたとしても、年々、車の車高は下がる一方であり、これ以上車高が上がることはまず無い。
そもそも、車高のことを言うのならRV車に買替えるのが本筋である。この場合、軽のジムニーなどが選択肢になってくる。しかし、ジムニーでは車中泊に問題がある。車中泊のスペースがある普通乗用のRV車は、維持費の面で懲りた。そなると結局は軽のワゴンしか選択肢は無いのである。
最終的に多少のローダウンは割り切って考えるという決断となった。
※アップスプリングも、近年、1メーカーのみ販売されているようだ。しかし、車高を上げることは、スプリングを強化したとしても不安定さにつながる話であり、結局、ローダウンによる足回りの強化を選択することになった。こればっかりはやってみないとわからないだろう。

【50偏平のスタッドレスタイヤ
私の場合、年間走行距離のほぼ9割以上が冬場のスキー行での使用であり、スタッドレスタイヤで運転している時間がめっぽう長い。ところが、スタッドレスタイヤの乗り心地というのはご存知の通りグニャグニャしており、シャープさのかけらもない。
これがアトレーの運転性能を更に悪化させていた。

このグニャグニャ感を無くすため、思い切って50偏平のタイヤを試してみることにした
数年前まで50偏平のタイヤというと高値だったが、近年、軽自動車でも純正で50タイヤが付くようになり、市場に出回る率も上がったということで、値段がぐんと下がったのがこの2、3年である。
それでも国内メーカーのスタッドレスで探すと、50偏平のタイヤとホイールのセットは6万以上コースとなった。

そこで、以前に買ったことのあるアジアンタイヤの通販サイトで検索をしてみると、なんと、アトレー用のアルミホイール台湾製スタッドレスイヤのセットが3万円台後半という価格で販売されていた。
この1~2年でアジアンタイヤのスタッドレスも性能がグンと上がり、オートバックスどの量販店でも主流で扱われるようになっている。これが3年前だったら少し躊躇はしたかもしれないが、台湾製であれは品質も問題ないだろう。即、購入に踏み切った。

ネット注文で強化スプリングとタイヤが届いたのが1月中旬。相変わらずの暖冬で雪は全く降らない。時間はたっぷりとあった。

【スプリング交換作業】
当初はスプリングを購入したオートバックスで入替えをやってもらう予定だったが、作業工賃が2万3千円で、総額5万弱コースとなってしまうのでキャンセル。スプリングの交換は自分で行うことにした。何より、若かりし頃に頻繁にやっていた作業である。工具を購入してもこの工賃なら十分にお釣りが来るはずだ。

工具類はサービスマン時代に会社から頂いたものがあるし、以前より、電動インパクトレンチ、トルクレンチ、小型の油圧ジャッキは持っていたので、スプリングの入替えで必要になるのはストラット・コンプレッションと馬(リジッドラック)だけであった。
ネットで安いものを探すと、送料込みで合計で3千円強で済んだ。

大まかな交換方法は頭に入っているものの、L70ミラとは勝手が違う。ネットで十分に下調べを行うと同時に、昔サービスで使っていた頃のサービスマンマニュアルを開いて、締め付けトルクなども確認した。
問題となるのは、作業場所である。マンションの駐車場だと、スプリングの入替え作業は大掛り過ぎて目立ってしまう。他の車が少ない平日の夜勤明け~2連休を作業日に選んだ

【苦難の入替え作業・・】
アトレーは、購入直後の2年ほどは野外駐車場だったが、2007年からマンション付属の屋内駐車場に移動した。そのおかげで、これまで歴代の車と違い、外観は新車の時の状態を保ったままである。
しかし、さすがに車齢10年ともなると、部品を外すのも一苦労であった。ポロッと折れたボルトは2本。また、ストラットの取り付けボルトの固いこと・・・。ラチェットにメガネレンチを咬ませると、何とかゆっくりと回せるのだが、それこそ左右で合計4本の固定ボルトを取り外すのに1時間半以上ほどかかった。正直、この作業で腕力は限界を超えてしまった。
また、膝を着いての作業が長時間に及んだことで、膝頭を痛めてしまった。作業から1か月過ぎて現在でも痛みは続いている。

一方で、馬(リジッドラック)を新たに購入したことで、ジャッキアップの手間が半分になった。
前タイヤ2本を外すにしても1回のジャッキアップで済むのだから、体力面の考えるとこれほど画期的な出来事はない。
最終的には終日8時間の長丁場の作業となったが、新たに学んだ点や改善も多く、実のある作業となった。

【驚くべき事実】
さて、スプリングの入替えは、予想よりも長引いたものの、1日で済ませることができた。しかし、折れたボルトの処置など、いくつかの問題点が残ってしまった。その中で最大の伏兵・・・ともいえる問題点がボディ下部の腐食だった

購入当初より、アトレーはボディ下部の錆の回りが早かった。1年経過した時点で、タイヤハウスから見える部分に既に赤錆が出るようになっていた。当時は水はけの悪い野外駐車場だったから、ある意味、仕方が無かったように思う。
その後、屋内駐車場に移動となり、ある程度、防錆処置も行ってもらい、また、スキーの帰りには毎回下回りの戦車を行うなど、気を使っていたので、錆の進行は気にも留めていなかった。
しかし、この度の作業で、ボディ下部に潜りこんで自分の目で確認すると、その錆のひどさは「腐食」と表現して良い状態まで進行していることがわかった。

ここまで腐食が進んだ原因は何なのか?屋内駐車場の通気性が原因だろうか?左側と後部は壁なのだが、運転席側は外気に面しており通気性は悪くは無い。腐食の激しいのはむしろ外気に面している右側とリヤバンパー付近だった。これらの腐食が、駐車場由来のものなのか?以前、駐車していた場所でのダメージの結果なのか?真実はわからない。しかし、これらの錆を放置することはできなかった。

結果、リヤバンパーを取り外し、錆を落として防錆塗料とシャーシブラックを吹く作業で、合計4休日を費やす結果となった。それでも1月中に全ての作業が終了したのは上出来だと言える。

いずれにしても、ボディの腐食は、今後も進行して行くだろう。しかし、定期的に錆落としと防錆作業を行うことで、腐食の進行は遅らせることが可能なはずだ。一部はいずれ穴が開くだろうが、走行や生活には支障が無いと考える。
何より、車を長持ちさせるには、自分の目で確認をして、まめに手を加えるしかないことを学んだ。ディーラー任せではダメである。その点、馬(リジッドラック)の購入は、作業効率の向上という点で意義があった

【試運転】
1月の最後の休日。青垣町方面に試運転を兼ねてドライブに出かけた。
当初はゴツゴツと突き上げるのでは?と予想をしていたが、全くそんなことはなく、乗り心地は至って滑らかだった。コーナリング、かつて乗って来た車と比較しても1番に良いのでは?とさえ思えるほどである。

アトレーは乗用タイプとして販売されているものの、結局は軽の箱バンである。走りを追及するような車ではない。それがスプリングを強化しただけで、運転性能が大きく変わったのだから、この変貌ぶりには驚いた。
これならもっと前からやっていれば良かったと思ったが、2年前にはこのセットでこの値段で購入は不可能だったわけだから、まぁ時代の流れと時の巡り合わせだったかもしれない。結局、スプリングが1万5千円程度、工具3千円程度、タイヤとホイール合わせて消費税込みで4万円強、6万円でお釣りが来る値段で済んだ。

心配していた車高も、宣伝文句では「30~35mm、納得のダウン量」となっていたが、結局は15mm程度のダウンで済んだ。もちろん、スタッドレスタイヤも同時に交換しているので、それらを総合した結果ではあると思う。
しかし、雪道を走る私にとって、車高のダウンが最小限で済んだのは、うれしい偶然であった。