【プルーク暴言B】001号

【プルーク暴言B】001号

<<暗黒の10年を考える>>

白馬村にあるペンション、アルピーヌのご主人、丸山貢一氏のサイト"斜滑考"、"直滑考"にあやかり、「プルーク暴言」というコーナーを立ち上げたのが、東日本大震災から約1年後の2012年3月24日だった。

もともとこのコーナーは、2003年・・・突如、日本スキー教程に採用された「市野スキー理論」叩きのために立ち上げたものだった。それから10年後の2013年秋、切望された「市野スキー理論」取り下げが発表される。

長かった暗黒の時代は終焉を迎え、もはや「市野スキー理論」叩きは不要となったかに見えた。しかし、いくら変わり身の早い日本人とはいえ、10年という時間は余りに長く、今後しばらくは、効率的なスキー操作とは何か?の議論は続くと思われる。

また、私自身、このコーナーに感じたことを思うがまま記述して行った経緯もあり、通して読むには一貫性を欠く部分もあった。これらを踏まえ、今後の備忘録として、このコーナーを再編集することにした。(2014/07/20)

 

<<プルーク暴言というコーナーの由来>>

丸山氏の"斜滑考"、"直滑考"というサイト名は、斜滑降、直滑降というスキー用語に由来している。私もこれを真似たスキー用語で"考"の文字が使える単語がないか?探してみたのだが、適当なものがない。そこで、直滑降、斜滑降に続いて大切な"プルークボーゲン"というスキー用語をひねって、このコーナーのタイトルを"プルーク暴言"としてみた。

私は丸山氏ほどのスキー技術を持ち合わせていないので、"斜滑考"、"直滑考"のように、スキー技術の深部にまで突っ込んだ話を書くことはできないと思う。しかし、私はこれまでに、基礎スキー、山岳スキー、海外スキー、ヘリスキーを経験し、テレマークスキースノーボードも楽しんでいる。また、兵庫県のとあるスキースクールに所属していた時期もあり、キッズレッスンを担当させてもらった経験もある。そして、とりあえずは工学部卒業ということで工学士だ。

これらの経験を活かして、SAJの提唱する謎に満ちたスキー技術「自然で楽なスキー」への疑問を考えて行きたいと思う。

なお、私はどこの団体、クラブにも所属しておらず、また山スキーヤーという立場上、SAJに対して何のしがらみも無い。よってこのコーナーに記述する団体名、個人名は、極力、ありのままを記載することにする。

 

<<基礎スキー界、暗黒の10年と私のナンバ十年戦争>>

さて、暗黒の10年のスタートラインである2003年から遡ること4年前の1999年・・・とある1冊のスキー技術書がスキージャーナル出版社から発行された。題名は「カービング革命 水平面からの角付けから始まる」である。
※「私のナンバ十年戦争」https://nobo3mcnabsaadkobe2.hatenadiary.com/entry/31588023

 

カービング革命という書籍】

カービング革命 水平面への角付けから始まる」(初版1999年1月)は、SAJ教育本部スキー部技術強化委員会・委員長を務めた市野聖治氏が、自らの説くスキー理論を紹介した書籍だ。内容は、模型スキーによる滑走実験に始まり、デモンストレーターによるスキーの滑走比較実験、これら実験から得られた結果の考察、自らの滑走理論の解説から成る。私はこの書籍を、SAJ1級を目指していた2000年頃に購入した。

2000年というのは、カービングスキーが一般スキーヤーにも広く浸透し、レースや技術選などの選手権でその優位性が確立した時期だった。その頃、私はSAJ2級を取得していたが、正直な所、スキーというものを良く理解していなかった。2級を取得し、これから1級を目指すにあたり、今後、ますます主流となって行くであろうカービングスキーの特性をより深く理解したいと模索を続けていた。

そんな矢先、出会った書籍がこの「カービング革命」だった。

この「カービング革命」という書籍・・・現在では、トンデモ本、オカルト、擬似科学・・・などという悪評が定着しているものの、当時はそんなことはわからない。書店でも既に扱ってない状況だったので、直接、出版社から購入した。つまり、だれからも見向きもされず書店から引き揚げられ書籍だった。知らなかったとはいえ、よくぞこのような悪評の書籍を購入したと思う。

しかし、今になって思えば、これほど貴重な資料も見当たらない・・・というのも、トンデモ「ハイブリッドスキーイング理論」の基礎が、この書籍には書かれているからだ。つまり、「市野スキー理論」の原点となる書籍である。

私のスタンスとして、何かを批判するにしても、ただ拒絶するのは良くないと考えている。ある程度、中身を理解してから批判を行なうのは大切なことだ。

しかし、指導員研修会なんぞ参加したこともない私が、SAJの指導理論を知るのは、この高度情報化社会においても実に困難であった。ネット上で詳しく理論解説を行っているサイトも存在せず、近隣の図書館にも2003年以降の関連書籍は置かれていない。こうなると、SAJ指導理論は門外不出の奥義か?とさえ思える。とはいっても購入するのもアホらしい。そんな中、「カービング革命」という希少本を所持している私は、大変ラッキーだったと言える。
(※)調べても「市野スキー理論」肯定派のサイトが存在しないのは、実に不思議であり、興味深い・・・

著作権の関係もあるのだろう。日本ではSAJのサイトを見ても日本スキー教程のネット版は存在しない。一方、欧米ではその団体の公式サイトからスキー指導理論を読めるようにしている場合すらある。

ここに「カービング革命」の前書きを記す。
「ごく平凡なスキーヤーが、雪山は世界であり、スキー滑降はそのなかの一過程であることを知った。そして、雪山の斜面を克服するために、スキーをつけた人間は、自然そのものの一部でなければならないことを学ぶのである・・・・・・・・。」

ナチュラルなスキー技術の解説書を思わせる、なかなか良いキャッチである。 このあたり、読者のツボの押さえ方が実に巧みである。小説は最初のキャッチが大切だと言うが、まさにその定説通りである。

私が「市野スキー理論」で感じるのは、着眼点からその証明までの展開にある。

これでもか!とばかりに有名人を引き合いに出し、自身の主張へとこじつけて行く・・・その展開が、宗教の勧誘や、マルチ商法などに重なって見える。そんな理由も手伝って「市野スキー理論」は、オカルト、宗教と言われるのだろう。

この市野聖治という人物、専門はスポーツ経営学だという。ネットで調べてみても詳しい経歴はわからない。もとよりスキーはできるのだろうか?指導員ぐらいは持っているのだろうか?知人の話によると、市野氏は指導員研修会ではスキーを履いて移動はするものの、フリースキーを人前で見せることは皆無なのだという。滑走技術で格上の人間の前では自分の滑りを見せない・・・いかにもプライドと立場優先という感じがして気分が悪い。このような愛知教育大学の一教授が、SAJ愛知県連を経て、なぜSAJの中央に10年も君臨し続けたのか?今もって謎である。

 

【2003年の珍事】
2003年、日本スキー教程に、この「市野スキー理論」が採用される・・という珍事が起こる。水平面理論・内足主導による角付け中心の滑りが、日本のスキー教程の中心に据えられたのだ。誰も見向きもしなかった売れ残り書籍のスキー理論が・・・である。この時、皆が感じた衝撃と違和感は、昭和15年、日本がヒトラー政権と手を結んだ時に有識者が感じた衝撃と同種のものだったに違いない。
(※)昭和15年の日本では言論統制が徹底されており、民衆がこの同盟の意味を知ることは無かった。

当時は、なぜこんなことになったのか??理解に苦しんだものだが、それからに10年・・・指導現場での悪評にもかかわらず、「市野スキー理論」は淘汰されるどころか「ハイブリッドスキーイング」へと進化し続けた。

この日本基礎スキー界最大の珍事より後、現場ではこのスキー指導法に対する反対意見が続出したが、いずれも「経営学者がスキー論を書けるはずがない」「物理の法則を理解していない経営学者が考えた屁理屈だ。」などという非某・中傷レベルの言動ばかりで、論理立てた反対意見は一握りだけであった。

経営学者だから物理科学が理解できてない・・・という理屈は単純思考だ。

今思えば、古くからあるバインシュピールの有効性を、多くのエキスパートスキーヤーが感覚的にしか説明できなかったことが「市野スキー理論」を助長させたように思う。「市野スキー理論」の矛盾点を指摘するには高校物理程度のレベルの知識があれば十分で、その気になればネットなどで調べれば良かった。

同時に、SAJという組織には、理論立てた反論を、下位団体から上部団体に具申できるシステムも存在しなかった。仮に、スキークラブ、スキー学校レベルで個人が反対意見を主張しても、結局は一個人と集団との人間関係へと発展し、結果としてその反論者は所属する集団を去らなければならなかっただろう。去った後に意見が認められたとしても、元のグループに復帰することは無く、反論者は活動の場を完全に失ったはずだ。

現場からの不評にもかかわらず、中央ではあらぬ方向に事が進んで行き、現場が悲惨な状況から抜け出せなくなってしまう。これは、日本の組織ではよくあることだ。昭和16年前後の大本営作戦課の人事を思うと、服部卓四郎や辻政信らが市野聖治と重なって見える。

大風呂敷の作戦は、面目上は成功とされているが、現場で戦った兵士達の状況は凄惨を極めた。一部の秀才達が考案した奇抜な作戦が、ごり押しで実行されるという、現場無視の典型的な例である。これは日本企業が抱える現代の諸問題へと繋がっていく話でもある。日本独特の人事と採決システムは、一旦決まってしまったものを変えることが難しいのかもしれない。

◆神奈川県連指導員研修会のサイトにて市野氏の講義の模様がレポートされている。
http://www.sak.or.jp/report/2004/kyouiku-kenshukai/kensyukai1108-02.html
http://www.sak.or.jp/report/2005/kensyu-riron/kensyu-riron01.html
http://www.sak.or.jp/report/2006/kensyu-riron/kensyu-riron1113-03.html
◆市野理論と二軸論に関して(神奈川県連南関東ブロック研修会の模様)
http://www.sak.or.jp/report/2005/kurumayama0-nankan/kurumayama0-03.html

 

◆一方で、市野教授との直接対決が掲載されている貴重なブログがある。
スキーの知人のブログに紹介されていた『アルペンスキー研究所』さんのブログ・・・
この管理人さんが、市野教授の講演を聞きに行かれ、直接、市野教授に質問をぶつけたというのだ。「アルペンスキー研究所」さんはレコーダーで講演を録音しており、その一部始終を克明にUPされている。

第一回
http://blogs.yahoo.co.jp/lxn42214/63005104.html%E3%80%80
第二回
http://blogs.yahoo.co.jp/lxn42214/63013459.html%E3%80%80%EF%BC%89
第三回
http://blogs.yahoo.co.jp/lxn42214/63025067.html
第四回
http://blogs.yahoo.co.jp/lxn42214/63040743.html
第五回
http://blogs.yahoo.co.jp/lxn42214/63041442.html

 

Schi Heil !!